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◇米中双方に寄らず
「日本はどうすればいいか、といつも聞かれるけど、僕はそんなことを考えていない。矛盾するけれど、日本のことを考えないこと、日本から離れて考えることが、日本のことを考えることになる、と思う」
柄谷行人さん(67)は一つ一つの言葉を丁寧に選びながら、静かにそろりと話を始めた。ニュータウンにある柄谷さんの自宅。外はやわらかな日が差し、心地よい風が吹いていた。
(中略)
そして、やはり日本だ。衆院選が近い。候補者の知名度や、各党が打ち出す甘そうな政策に惑わされないためには、歴史と世界から顧みて日本がどのように針路を取るべきかを有権者一人一人が考えるべきだと柄谷さんは言いたいのだろう。東アジアの周辺国との関係は防衛面だけではなく、経済など国民の生活にも大きな影響を与える。
柄谷さんが憂慮するのは、米中両国との関係だ。早晩、米国と中国のどちらにつくかの選択に迫られるとみる。「その時、日本の針路や選択として両方を取る。つまりどちらも選ばず、両国と友好的にやること。後で見ると、米国にも中国にも属さないでやっていった方が正しく、新しいあり方だったことが分かると思う」。太平洋戦争を起こした反省から、両国のどちらも取らない選択が出てくると柄谷さんは考えている。
日本は分裂した状態に耐えることができるだろうか。「耐えることが強いことですよ。日本は今まで国内が一つの方向でまとまってきたから、太平洋戦争のように失敗してきた。国内で議論になってもなお、分裂した状態のままの姿勢を保つことが重要だと思う。米中両国のどちらについても日本は異分子です。そこは運命だと思って、その間で生きればいい。それこそが僕は普遍的だと思う」
語り始めてから1時間半近く。柄谷さんが初めて大きな声を出し、空気が動いた。
軍備増強を続ける中国には「あなたがたは戦争をやるかもしれないが、われわれは過去の反省に立った証拠である憲法9条のもとで戦争はやらないんだと言えばいい」と。オバマ大統領が核廃絶を打ち出した米国には「日本は戦争放棄なのだから、核廃絶に決まっているじゃないか」と。
最後は「われわれの方が世界の先端に立っていて、世界は結局、その方向に向かうほかないんです」という言葉に力を込めた。誇りを持ちながらも、異分子であることを恐れるな、というメッセージである。
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【毎日新聞】中国よ、あなたがたは戦争をやるかもしれないが、我々は憲法9条のもとで戦争はやらないんだと言えばいい-柄谷行人さんの続きを読む